訪問診療とは、定期的に患者さんの家で診察することです。
往診と似ていますが、往診は、患者さんの体調が急に悪くなった時に一時的に行われます。訪問診療を始めれば、外来通院のように、継続して定期的に診察を受けることができます。そして、具合が悪い時は往診という形で臨時の診察を受けられます。訪問診療を始めるということは、定期的な訪問診療と臨時的な往診を併用することになります。
利点:
1:外来通院に行かなくて済む
2:具合が悪い時でも往診を受けられる
3:なにか変わったことがあったときもいつでも相談できる
4:自宅で最期まで過ごせる(痛みに対しては病院と同じ治療ができます)
(病気のために亡くなっても警察が来ることもありません)
5:外来のような3分診療ではなく、ゆっくり話ができる
欠点:
1:外来通院にくらべて費用が高額
(1割負担で4千円/月程度余計にかかります)
2:レントゲンやCTなどの検査ができない。
CTやレントゲンは撮れません。
病院に行かないと病名が断定できないことがある。
3:血液検査の結果がでるのが遅い
血液検査も検査センターに頼むのでどんなに早くても3時間かかります
夜間や休日の血液検査はできません。(検査センターが閉まっているため)
3: 誰もが利用できるわけではない
(通院困難な病状の人だけ)
訪問診療とは、上で説明したように定期的に医者が自宅に来て診察してくれることなのですが、主に次の3つのタイプがあります。
1)24時間365日必要なら往診対応してくれる在宅療養支援診療所
2)診療所が開いている時だけ往診対応してくれる一般診療所
3)往診対応していない一般診療所
365日24時間いつでも連絡がついて対応して欲しいと思っているのならば、在宅療養支援診療所を選んでください。在宅療養支援診療所とは、365日24時間対応できる診療所のことを指しているので、在宅療養支援診療所かどうかを確認すれば、ことたります。
普段、訪問診療をしていない先生が、訪問診療をしてくれる場合もあります。在宅療養支援診療所の届け出を出していない場合は、診療所が開いている時だけの対応となる場合もありますし、往診は対応していない場合もあります。
訪問診療を開始する時は契約をすることになっているので、契約の中でどういう対応をしてもらえるのか確認が必要です。
訪問診療でも痛みや苦痛をとる方法は病院と変わらずに行えますが、病院と全く同じような治療ができるわけではありません。機器も限られていますし、看護師さんがずっとそばにいてくれるわけでもありません。
より濃厚な治療を受けるという意味では、病院以上の選択はないのです。
ですから、具合が悪くなった時は入院するしかないと思っているのならば、少し無理をしてでも病院の外来に通った方がよいと思います。と言うのは、私たち訪問診療医が頑張って自宅での治療を続けるほど、濃厚な治療のタイミングが遅れてしまうからです。
訪問診療を活用しなければならない人は、病気のために体力が低下して通院できなかったり、後遺症のために通院が難しい人たちです。入院したからといって元の健康な体に戻るわけではないのです。そういう健康状態にある人たちは、入院して治療を受けることを単純に回復して良くなると考えられなくなっていきます。治療が単純に希望として映らないのです。
はじめからもう入院はしないと決めることも難しいと思いますが、その都度、入院が適切なのかを本人と相談する必要があります。
ご家族の方も、具合が悪くなったら病院しかないという考えだけではなく、本人の気持ちに寄り添って欲しいのです。家族の負担もあるので、本人の意向に100%添う必要はないと思いますが、話し合ってその都度対応を考えて欲しいと思います。
治療するという点だけで言えば、在宅医療は病院には勝てません。それでも家にいながら治療を受けるのは、本人にとって、より濃厚な治療よりも大切なことがあるからです。(訪問診療でも、酸素や麻薬の注射もできますので、痛みや苦痛をとる治療を受けるために入院する必要はありません)その理由は人によって違います。家族と離れたくない人、慣れ親しんだ家に愛着を感じている人。入院治療に希望を見出せない人。私たち訪問診療医は、患者さんやご家族へ病状の説明や今後の展望など医学的なアドバイスをするとともに本人の望んでいることを聞き出して、本人にとって理想的な診療が受けられるようにとりはからいます。
在宅医療で一番大切なのは、本人、ご家族の気持ちです。